みなかみ町平和式典・戦没者追悼式に当り、謹んで式辞を申し上げます。ご遺族並びにご来賓各位には、ご多用中にも拘わらずご臨席の栄を賜り、厚く御礼申し上げます。
私達は、ここに英霊の御霊をお迎えして、過去の悲惨な戦争を二度と繰り返さないことを誓うと共に、今日の平和と繁栄は戦没者の犠牲の上にあることを思い、謹んで感謝と哀悼の誠を捧げる次第であります。
顧みれば、先の大戦では戦死者230万人、戦災死者80万人の、合わせて310万人余の同胞が、悲しい犠牲になりました。我が町では902柱の先人が、奥利根の故郷を思い、愛しい家族を案じつつ、戦禍に倒れ、戦場に散りました。また、一家の柱を失ったご遺族皆さんは、悲しみに耐え、困苦の中で子女の養育に努め、家業の発展に尽くしてこられました。
往時を偲べば筆舌に尽くし難く、今はその時々のことが走馬燈のように脳裏を去来していることと思います。
私達はこの激動の世紀を、ご遺族皆さんと共に幾星霜、常に郷土愛を胸に、故郷の建設に努めてきました。
戦争終結から、早や63年の歳月が過ぎました。
今では戦争を知らない世代が大半を占め、あの暗黒の壮絶な戦争は、何処の国のことかを思わせるような風潮がありますが、何か自国の平和だけに満足している世相に不安すら感じます。
私は終戦の時、5歳でした。先の大戦では私より10数年早く生まれた方々が、戦役や学徒動員で戦地に赴き、ある人は戦死し、また死の淵に立たされ、地獄の如き戦場を彷徨されました。そして、この時代に生まれたことを憂い、望郷の念を募らせ、世の無常を嘆かれたその心情が、痛いほど感じられます。
思えばあの戦争は、何の意味があったのでしょうか。
明治維新以降、日本は「坂の上の雲」をつかまんと駆け上がり、一等国入りを目指した太平洋戦争では、計り知れない国民の血を流し、多くの領土と貴重な資源を失いました。この戦争では国を支える若者が、自分の意思とは関係なく、命令一つで戦場に、出撃に強要され、尊い命を失いました。召集令状を受けた皆さんは、家族を思い、愛する人と別れ、夢や希望を捨てて戦地に赴きました。その心境は、正に断腸の思いであったと思います。
今になって「日本は戦争に負けたが、平和になった。」という言葉を聞きが、国は国民に計り知れない犠牲を強いると共に、大きな過ちを犯しました。
前線で生死をかけて戦った兵士の手記や回想録は、それを物語っています。酷寒・炎熱の地で壮絶に闘い、補給路を断たれて軍事物資や食料もなく、飢えとの戦が生々しく語られています。戦争はどんなに美辞麗句を並べても人が殺し合うことであり、飢餓との戦いは人間の尊厳すら奪ってしまいます。このような境地の中で、きっと生きて故郷の土を踏み、家族と共に腹一杯の食事をしたいと思ったことでしょう。その情景を思い浮かべる時、万感胸に迫るものがあります。
哲学者・梅原 猛氏は、「私は、原爆を落とした者と、特攻というおぞましい死の道具を考えた者を許すことができない。」と言っておりますが、私だけでなく、国民の誰もが同じ考えであり、戦争は二度と繰り返してはならない痛恨事であります。
戦争に勝ち負けはありません。戦争はただ私達に悲惨な結果をもたらすだけであり、この事を国民の全てが肝に銘じ、英霊各位の前で不戦を誓わなければなりません。
我が国は、戦争終結から今日まで、様々な課題を抱えながらも平和に過ごしてきました。しかし、あの残酷で悲壮な戦争は、忘れかけているように感じます。
今こそ私達は、日本が近代史で歩んだ道程を、次世代に正しく伝える役目があります。そして、学校教育では、史実に基づいた戦争の真実を教え、日本国民が関係国の国民と同じ歴史観を持って、恒久的な世界平和に貢献することを念願する次第です。
早いもので、新生みなかみ町はこの9月議会で3回目の決算議会を迎えました。お陰様で3年連続の黒字決算となり、町民皆さんのご理解とご協力で「財政再建」の道筋をつけることができました。今後は更なる行財政改革を進めながら、懸案事項である教育施設整備、道路整備、上下水道事業、都市計画事業等の実現に努め、更には温泉街の再開発、企業誘致に取り組み、みなかみ町が21世紀に飛翔できる基盤を構築してまいります。
今年7月には、福田前総理の下で「洞爺湖サミット」が開催され、低炭素社会の構築とCO2の削減が主要テーマとなり、環境問題が人類の喫緊の課題となりました。
そこで、利根川源流の町・みなかみは、自然に対する畏敬の念を心に刻み、「水」と「森林」に感謝し、率先して万物の生命を守るために、9月議会で『みなかみ・水・「環境力」宣言』、所謂、「環境の町」 宣言をおこないました。これは「人間が自然に与える力と自然が蘇る力の相互力」を環境力とし、水と森林の防人は「まもる力」を、水と森林の達人は「いかす力」を、そして、水と森林の使者は「ひろめる力」の三つの力を結集して、水源地の森林・山・川を守り、地球温暖化防止に貢献しようとするものです。そして時代を先取りして、みなかみ町の存在感を示しながら、地に足をつけた町づくりを進める決意であります。
英霊各位には、町づくりの行く末をご照覧頂き、末永いお導きを心からお願い申し上げます。
結びにあたり、英霊の御霊が永久に安らからんことと、併せて戦没者ご遺族皆さんのご健勝とご多幸をお祈り申し上げて式辞と致します。














