みなかみ町長 鈴木和雄
今、この大地に佇み思うことは、自然環境に対する思いやりと感謝の念を心に刻むことであり、併せて自然の力と結合して万物の生命を支える「環境力」を育てることです。
産業革命以降、私達は自然の持つ浄化作用が無限であるかのうように、CO2等の排出で環境汚染を繰り返してきました。
今ではその浄化力も臨界点にあると言われます。そこで、低炭素社会の構築とCO2の吸収源対策は、喫緊の課題として洞爺湖サミットでも議論され、今や地球温暖化対策は人類にとって大きな課題であります。
みなかみ町は昨年度、この悠久の大地を守り、且つ保護し、その活用の方向性を示すために「水と森林を育む・エコタウンみなかみ」を策定しました。この構想は、みなかみ町の貴重な財産である、山岳や広大な森林、それに連なる里山と農地、また谷川連峰に源を発する利根川等の資源や立地条件を最大限に生かすことです。そして、民間主導による上中下流の交流、観光や農業等の地場産業の振興、更には新たな工業振興を図り、「自立と共生」を目指ざす環境の町づくりの構想です。この構想は一言で言えば町全体の「環境力」を高めることであり、併せて我が町の存在感をPRし、個性豊かな町づくりを志向するものです。その手法は森林や里山を舞台に、人間と自然の係わりの中で、内在する相互の力を活性化してCO2の吸収力を高め、そこに生れる酸素と豊かな水を利根川流域の住民に提供できる森林空間の創造にあります。
民間では既に、「環境は自ら高い目標を掲げて挑戦する者にビジネスチャンスがあり、その目標が高ければ高いほど大きな成果が得られる。」とイノベーションを鼓舞し、新エネルギーの開発、電気自動車、更に家庭用燃料電池等の実用化に取り組んでいます。一方、地方自治体は「地方分権一括法」の制定から、自治体競争の時代に入り、これからは地域特性を生かした自治体運営が求められます。従って、この機会に機械文明の経済活動ばかりでなく、町民一人ひとりが「環境力」を身につけて、心と体の健康を維持し、豊かな衣食住の社会と明るい夢のある未来を拓くことです。
みなかみ町の面積は群馬県土の12.3%の広さで、林野がその約90%を占め、「環境力」は町づくりのテーマとして最適であります。先ずは全国に先駆けて、「CO2の削減と水源の森林を育む・環境の町みなかみ」を宣言して、国内はもとより全世界に力強く発信したいと思います。そのためには、先ず全町民が我が町の生態系を学び、万物が生きる環境のあるべき姿を認識し、その上に立って「環境力」を身につけることが肝心であります。「環境力」とは伝統的な絹織物の縦糸と横糸のように、人間の内なる自然と外なる自然がそれぞれバランスを保つ力であり、それは人間が自然環境に与える力と行動から生まれ、そこに生まれる相互の力が地球環境を守るのです。
21世紀は「環境の時代」です。みなかみ町は利根川流域住民2,900万人の「水源の町」であり、それだけに公益的な機能を果す責任を実感します。従って、環境問題は流域住民の生命と暮らしを守ることであり、取り組みにあたっては、決して大上段に構えることなく、理解者を増やし、衆知を集め、共に額に汗して「CO2の削減と水源の森林を育む」運動を展開し、環境宣言の町として真正面から取り組みたいと思います。そして、町民一人ひとりが「環境力」を一つのステータスとして、「夢のある町づくり」に邁進できることを願っています。
2. 景勝地への車の乗り入れを規制し、豊かな自然に癒しの空間をつくり、環境宣言に相応しい観光地を創造する。
3. CO2を削減するために、自転車や公共交通機関を利用し、自家用車の利用を控える。また公用車は、計画的に環境にやさしいハイブリット車に更新する。
4. ゴミの分別収集や減量化を促進し、堆肥化など資源循環型社会の構築に努める。
5. 学校教育、生涯学習の両面から環境問題を学び、我が町の生態系の実態を知り、CO2の削減に理解と協力を求める。
6. 国際保護鳥トキの分散飼育に名乗りを挙げ、野生復帰の適地を指定し、トキが生息できる川の自然再生、健全な水田と森林の環境整備に努める。
7. 「環境力」の向上に繋がる農林業の振興を図り、その活動を内外にPRし、理解者や協力者のネットワークづくりに努める。
地球温暖化は、人類が直面している難題であります。政府は既に、CO2の排出量を抑えた2050年の日本社会を描写し、国民が安全で安全して暮らせる社会環境の構築に取り組んでいます。経済活動のレベルを落とさずに、大幅なCO2の削減は難しいとの声もありますが、この事は全人類の存亡を賭けた最重要課題であります。是非とも国際世論を喚起し、国民の協力を求めて、我が国の政策が展開できることを期待します。
地球温暖化対策に立ち向かうことは、日本の、そして世界の将来を考えることです。そして、子孫にどのような未来を残すべきか、個人、企業、自治体、国がそれぞれ真剣に考えて、責任ある行動を起こす時であります。
この時に、みなかみ町は「環境の町」を宣言して、低炭素社会に挑戦すると共にCO2の削減対策に取り組み、国民共有の財産である森林・山・川を守ります。そして、利根川を通して首都圏及び流域住民に良質な水を提供し、自然豊かな癒しの空間を創造します。そして、今後は「利根川源流の町」から環境宣言を高々に掲げ、「環境力」をキーワードに町づくりを展開する決意であります。その道程は決して平坦ではありませんが、「水と森林を育む・エコタウンみなかみ」の実現によって、町民が「自立と共生」の社会づくり大きく前進することを念願しています。
(平成20年8月15日)













