みなかみ町長 鈴木和雄
(平成19年6月)
樹々の緑が深まる季節を迎え、全ての生物が躍動しております。参議員・知事選挙の投票日まで後僅かですが、マニフェスト論議よりもネガティブ・キャンペーン(中傷合戦等)が盛んなようです。当然のこととして、選挙は雌雄を決する戦いですが、県民が良く理解し、判断できる政策論争を期待します。また、景気回復は首都圏とその近郊のみで、依然として中山間地域の先行きは不透明ですが、だからと言ってへこたれず、新しい構想力をもとに、この局面を打開したいものです。
構想力が試される
現在、国・地方の借金が1,000兆円を超えると言われますが、今後は、国・地方とも借金財政に依存しない構造改革が急務であります。「三位一体の改革」が進む中、我々、地方自治体も発想を転換して、必要な財源は自ら賄い、どんな町を創るか、地域が自ら決める、自主・自立の自治体運営が求められます。従って今の時代は、地方分権の対応や行財政改革等を通して、地域をどのように再生するか、その構想力が試されていると思います。みなかみ町は、自らの「行財政改革」の下に、新たな構想力を持って、この局面を乗り切る決意であります。
特にその中で、人件費等の経常経費の削減に努める一方、「出産祝い金制度」や「13歳未満の医療費無料化」等、新たな施策を実施し、併せて小学校の統廃合等、義務教育の施設整備に必要な財源を確保しています。更には福祉・医療、幼児教育、消防、ゴミ処理等、国が示す行政サービスを効率的に維持できるように努力しているところであります。
しかし、これらの財源は、国の財政難や税源移譲を理由に次々と一般財源化され、町にとって急激な財政負担となっています。国は、必要な財源は地方交付税制度の中に確保されていると言いますが、地方交付税の総額が抑制され、税源移譲によって首都圏に税源が偏在する現状では、都市と地方の格差は開くばかりであります。従って、福祉・医療、教育、少子化対策等、国民が等しく享受できる行政サービスは、国が責任をもってその財源を確保すべきであります。加えて、県には自治体間に格差が生じないように、積極的に国に働きかけることを強く望みます。
美しい故郷の姿
よく「地方切り捨て」の言葉を耳にしますが、安倍総理が「美しい国」を掲げたのは、地方が美しさを失いかけているからではないでしょうか。人手の入らない山々は荒れ、耕作放棄地が拡大しています。更に、観光地は廃屋が建ち並び、町の中心部はシャッター通り化します。
改正された教育基本法は「郷土や国を愛する心」を強調していますが、現実の郷土の姿は段々とその美しさを失っています。しかし、山川草木が織り成す四季の移ろい、命を育む農の営み、郷愁を呼ぶ田園風景等は、「美しい故郷の姿」を蘇えらせて、私達に精神的な安らぎと生きる勇気を与えてくれます。
「みなかみ町山岳都市構想」の策定
みなかみ町は、豊富な温泉に恵まれ、谷川岳に抱かれた雄大な自然が清らかな水を生む「利根川源流の町」であります。私達は、この優れた自然環境を保全・活用し、誇りをもって生き続けるために「みなかみ町山岳都市構想」の策定を考えております。この構想は、隣接する湯沢町との広域連合を視野に、谷川連峰と利根川を核とした広範囲な地域に存在する山岳、清流の環境保全と山岳観光を振興し、農地の保全と有効活用に知恵を絞り、更には美しい町並み形成等の指針を定めるものです。加えて、行政の役割や町民の役割を明示すると共に、上下流交流の促進や町づくりへの参加を促し、地域の活性化を図る考えであります。
農地取得の下限面積と玉原道路
先ず農地の保全と活用については、農地法における農地取得の下限面積を10aにするよう、県知事に働きかけます。これが実現すれば、団塊世代の中山間地域への故郷回帰を促し、農業への新規参入者が増加し、農地の保全と農業の活性化を図ることができます。また、利根川流域住民2,900万人の暮らしと日本経済の一端を支える「ダム群の危機管理体制」の確立を図ります。それは「玉原道路」の建設であり、政権与党の力を借りて、その重要性を早急に国・県に働きかけてまいります。
現在、ダム群に通じる道路は、県道水上・片品線の一路線しかなく、有事に備えた危機管理体制が欠如しております。それだけに、国・県を挙げて一日も早く「玉原道路」の完成を熱望しております。この他にも、水上温泉の再生、上毛高原駅前の再開発等の懸案事業がありますが、何れにしても構想をしっかりと策定し、自らすることは果敢に挑戦し、町から県に、県から国と言うように、強力な応援団のお力を得て、実現に努力する決意であります。
「芸術文化村構想」の策定
また、みなかみ町には、日本を代表する数々の文化人が、上州の風土と温泉を求めて訪れ、その足跡を作品に残しております。これらの文化資源を有効に活用すると共に、この町に住む人・来る人が気軽に芸術に参加できる「芸術文化村構想」を考えております。幸いにも、昨年度から東京芸術大学との交流事業がスタートしました。卒業制作々品や関連作品の収蔵事業が進み、既に50点近い作品がわが町に寄贈されました。東京芸大と連携して、この作品を如何に活用すべきか調査研究し、収蔵事業を軸に芸術・文化に親しめる構想づくりを進めてまいります。
財政基盤の確立
以上、二つの構想を申し上げましたが、何れにしてもしっかりとした財政基盤が必要です。幸いに、みなかみ町は地方税等の自主財源に恵まれ、財政力指数は全国平均値に近い、0.48であります。今後は、地方交付税の減少が予測されますが、わが町は町村合併により、10年間は合併前の算出方法が保証されております。加えて、観光・農業を始めとする地場産業の振興と、一層の工業誘致等で雇用の拡大を図り、怠りなく行財政改革を断行すれば、安定した財政基盤が構築できるものと確信しております。
自助・互助・扶助の精神
今年度は「改革元年」と定めました。「集中改革プラン」に掲げた行財政改革を着実に進め、足腰の強い財政基盤の確立に取り組む決意であります。改革と構想を実現するためには、その実現に取り組む地域の力が不可欠であります。このため、町民と行政が共に考え、行動すると共に、町民と行政の役割を明確にする必要があります。そして、町民が自らの「自助」、互いに助け合う「互助」、行政が行う「扶助」の精神を尊重し、町民と行政が一体となって行う「協働の精神」を大切にしたいと思います。地方分権社会は構想力を競う時代であります。
従って、中央集権的な発想と決別し、町村が自らの責任と発想で、よりよい地域作りの構想を練り、そこに生まれる構想力と自治の力で「夢のある町作り」を進めたいと念願しております。今年度は、町づくりの憲法である「自治基本条例」を制定し、この理念の下で「みなかみ町総合計画」を策定してまいります。ご支援とご協力の程、お願い申し上げます。













